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What is LOHAS

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ロハスとは?

LOHAS

- ソトコト2005年7月号別冊付録チビコトより -

LOHAS~ロハス(Lifestyles Of Health And Sustainability)と言われる人たちが、アメリカで、ヨーロッパで増え続け、今後のビジネスや政治のあり方まで変える可能性を秘めた存在として注目されています。

ロハスとは、地球環境保護と健康な生活を最優先し、人類と地球が共栄共存できる持続可能なライフスタイルと、それを望む人たちの総称です。

無理や我慢ばかりでは、健康も、エコロジーも、幸せも、長続きしません。自分たちの幸せの向こうに、社会の幸せや地球環境への貢献が地続きでつながっている。そんな実感のある暮らし、それを実現できる仕事を望む人たちにモノやサービスを提供する社会が、アメリカやヨーロッパで飛躍的に伸びています。

そして今、日本でもロハスな暮らし、ロハスなビジネスやサービスが注目されるようになりました。もっと気軽に、もっと楽しく。ロハスクラブは地球と自分の新しい愛し方を提案します。



ロハスの6つのキーワード

- ソトコト2005年7月号別冊付録チビコトより -

健康的な暮らし

人の暮らしは「食べる」「動く」「考える」「眠る」といった活動の繰り返し。その循環が健康的であることがロハスの基本です。まずは自分にとって快適な、健康的な暮らしの要素について、考えることから始めましょう。

自然環境への配慮

暮らしが健康的であると同時に、暮らしを取り巻く自然環境もまた健康であることが、ロハスの実現には不可欠です。暮らしを犠牲にするのではなく、日々無理なくできる自然環境への貢献とは何かを考え、実行してみましょう。

五感を磨く

ロハスの在り方は、人それぞれ。自分の判断で、自分にとって必要なもの、そうでないものを選択することが求められます。情報や数値による判断だけでなく、自分自身の感覚でほんものを見つけることがロハスには不可欠です。

古いものと新しいもの

最先端の技術と、伝統的な知恵。新しい発想と、古くからの習慣。どちらかひとつではなく、新旧それぞれの良いところ、必要なものをバランスよく選びとること。それを自分の暮らしに取り込む方法を見つけましょう。

つながりを意識する

社会も環境も、自分の足元から地続きでつながっています。食べたものはどこから来たのか。捨てたゴミはどこへ行くのか。買ったり使ったりすると、地球にどんな影響を及ぼすのか。その先に何があるのかをイメージしましょう。

持続可能な経済

ロハスは都市生活や消費活動を否定しません。便利で楽しい、ハイセンスでカッコいい、そんなモノやサービスによって、人にも環境にもやさしい持続可能な経済システムをつくる。ロハスは経済から、社会の在り方を変えていきます。


アメリカ生まれのロハス

- ソトコト2005年7月号別冊付録チビコトより -

history

アメリカ生まれのロハス

全米15万人を対象にした価値観調査

 ロハスという言葉が注目されるようになったのは、2000年にアメリカで発売された書籍『The Cultural Creatives ~ How 50 Million People Are Changing The World』でのこと。著者である社会学者ポール・レイ氏と、心理学者のシェリー・アンダーソン氏が、全米の成人15万人を対象に15年にわたって実施した価値観調査の結果として、ロハスの存在を報告している。

 レイ氏らの調査によれば、信心深い保守派〈Traditional成人人口の約24%〉、民主主義と科学技術を信奉する現代主義者〈Modern同約48%〉に続く「第3の社会集団」として、ロハス志向を持った生活創造者〈Cultural Creatives〉の存在が確認された。

 生活創造者〈Cultural Creatives〉は、大量生産、大量消費を良しとする現代主義者〈Modern〉への反発から誕生したとみられ、60年代以降、徐々にその数を増やしてきた。

 レイ氏の調査によれば、2000年現在で全米の成人人口の少なくとも26%にあたる約5000万人、欧州連合(EU)諸国内の成人人口の約35%にあたる約8000万~9000万人が、生活創造者〈Cultural Creatives〉だという。つまり世界で1億3000万人余の人が、ロハスを志向していることになる。

生活創造者「カルチュラル・クリエイティブス」とは?

 では実際に、ロハス志向を持った生活創造者〈Cultural Creatives〉とは、どんな人たちなのか。レイ氏らの調査によれば、信心深い保守派〈Traditional〉や現代主義者〈Modern〉にくらべ、次のような傾向が強い人たちと考えられている。

 「持続可能な地球環境や経済システムの実現を願い、そのために行動する」、「金銭的、物理的な豊かさを志向せず、社会的成功を最優先しない」、「人間関係を大切にし、自己実現に力を入れる」、「なるべく薬に頼らず、健康的な食生活や代替医療による予防医学に関心がある」。

 自分の快楽、生き残りだけを追求する大量生産、大量消費型社会とは一線を画し、持続可能な自然環境と社会システムのもとで、すべての人々が共栄共存できる社会を志向する生活創造者〈Cultural Creatives〉たち。レイ氏らの調査では、こういった価値観をもつ生活創造者〈Cultural Creatives〉は過去40年間で年1~2%の割合で増加し、今後も確実に増え続けると予測している。

ロハスビジネスの急速な拡大

 自然エネルギー、社会的責任投資(SRI)、オーガニック食品、ホメオパシー、エコツーリズム。なんの関連もないように見えるが、これらは利益と社会的責任を両立させながら、環境と人間の健康を守ろうとするロハスビジネスとしてひとくくりにできる。

 米国のロハスビジネスの市場規模は、いまや3510億ドル余(約38兆円)にのぼるとされる。高い意識と行動力ある創業者に率いられたロハスビジネスのベンチャー企業が、一堂に会する「 ロハスコンファレンス(※1)」は今年で9回目を迎え、昨年は世界各国から過去最高の参加者を集めた。

 一方、地球環境や従業員の労働条件に配慮し、地域社会に貢献しながら安定した利益をあげることを目指す「企業の社会的責任(CSR)」という考え方を、ビジネスの中心に据える動きが年々広がっており、CSRに取り組む多国籍企業が互いの経験を披露しあう「ビジネス・フォー・ソーシャル・レスポンシビリティ(※2)」の年次会合も、毎年活況を呈している。

教育現場、働き方、生き方へと広がる価値観革命

 ロハスビジネスやCSRの広がりは、ビジネス教育の現場や学生の意識にも影響を与えている。欧米のビジネススクール(経営大学院)では2000年以降、MBA(経営学修士)課程に「CSR」「経営倫理」「環境と持続可能性」などに関する科目を設ける大学が大幅に増えた。

 世界各国のビジネススクールでロハスビジネスを学ぶ学生たちと、ロハスビジネスやNPO活動に携わるMBAホルダーたちによるネットワーク組織「ネットインパクト(※3)」も、年々規模が大きくなっている。ある調査では、「社会的、倫理的責任を果たしている点で評判の良い組織で働くなら、給料が下がってもかまわない」と考えるMBA学生が90%以上に達した。

 2005年1月にアメリカで創刊されたビジネス雑誌『Worthwhile(※4)』には、途上国の子どもたちに本を無償で送るNGOを始めたマイクロソフト社の元社員ら、ビジネスを通じて環境・社会問題の解決に貢献する「社会起業家(ソーシャルアントレプレナー)」に転じた人たちのストーリーが満載されている。

 このような雑誌が登場した背景には、アメリカでソーシャルアントレプレナーとしての働き方、生き方への関心が、かつてないほど高まっているという事情がある。その動きを牽引しているのが、ほかならぬ人々のロハスへの共感なのだ。

ロハス関連ホームページ(英文)
※1「ロハスコンファレンス」http://www.lohas.com
※2「ビジネス・フォー・ソーシャル・レスポンシビリティ」http://www.bsr.org
※3「ネットインパクト」http://www.net-impact.org
※4『Worthwhile』http://www.worthwhilemag.com



ロハスと日本の意外な関係

- ソトコト2005年7月号別冊付録チビコトより -

movement

日本で広がるロハス

 日本ではロハスそのものが流行っているといえるでしょう。ロハス・カフェやロハス・レストラン、旅行のパッケージツアーやラジオ番組など、ロハスと名のつくものがあちらこちらに出てきて社会現象にもなっています。アメリカではロハス層をターゲットにしたマーケティングは確立していますが、ロハス・カフェのような店はありません。流行が生まれやすい日本の特徴でもあると思いますが、ロハス層が生まれたきっかけのひとつに、日本人の価値観の変化があると思います。それまで日本人にとってお金が絶対的な価値を占めていましたが、バブルがはじけてそれがもろくも崩れてしまった。その絶対価値を失った喪失感の中、新しい価値を求めていたのです。

 そこにスローライフが登場し、人々は飛びついたのです。これは新しい生活価値として受け入れられたかのように思えましたが、郊外に畑を持って野菜を作ろうというこの思想は、忙しい都市生活者には理想郷でしかなく、限界があった。そういう中で、ロハスが現れたのです。

 ロハスは健康からみた環境を考えることを格好いいと思う、こだわりをもって生きるライフスタイルのことです。ロハスがエコロジーやスローと大きく違うのは、今の自分の生活とのギャップもなく、どんなきっかけからでも今すぐロハスのライフスタイルが送れるということ。会社員でも自営業でもアーティストでも、クルマに乗っている人でも乗っていない人でも、どんな人でもいい。縛りや制約もありません。万人に受け入れられやすいライフスタイルということが、人々に広く浸透した理由だと思います。

 また、ロハスはアメリカのマーケティング用語から派生したものですが、根底には東洋思想が流れているんです。ヨガをしたり、身体にいいものを選んで食べるなど、身体の内側や精神面から美しくなろうとする、まさにこれは東洋思想的発想なのです。ですから、アメリカから日本に、その東洋思想が逆輸入されたということになりますね。

 日本のものは食にしても、すべてがロハス的です。日本の風呂はまさに健康増幅マシーン。畳は夏に涼しく、冬は保温効果もあって一年を通して快適な万能床ですし、日本のトイレはタンクの上から水が出るので、すぐに手を洗うことができて清潔です。どれも自然環境とのつながりをもったものです。日本文化そのものがロハスなので、日本人にとってはひじょうに受け入れられやすいものだったのではないでしょうか。

日本で広がるロハス


ロハス・ウォッシュに気をつけろ!

- ソトコト2005年7月号別冊付録チビコトより -

 マーケッターの立場からいうと難しいのは、世代によってロハスの価値観が異なるということです。日本では現在、マーケティング的に分類すると、4つの層があります。定年退職後の、お金にも時間にも余裕のある中高年層、子どものいるファミリー層、ふだんから暮らしに気を配って生活を楽しむ、センスのある女性たち、スマート・ウーマン層、新しいライフスタイルを格好いいと思う、意識の高い若者。これまでは年齢別に、それぞれの生活状況でどのような商品が売れるのかということを引き出すことができましたが、価値観の多様化によってわれわれも新たなリサーチが必要になっています。

 たとえば、ロハス的な旅といっても、みな異なった価値を求めるのです。中高年層は温泉につかってのんびりする旅、ファミリー層は子どもといっしょに遊べるアウトドアなキャンプなど。提供する側はそれぞれの層に対して、彼らが何を買いたいのか、どういうサービスを受けたいのかということを考えなければいけません。

 そこで、消費者がもっとも気をつけなければいけないのは、ロハス・ウォッシュ商品です。ロハスで洗ったもの、つまり、本当はロハスでも何でもないのに、ロハスと銘打ってあたかもロハス的だと見せかける商品のことです。これから、そういうものがますます増えてくるのではないかと危惧しています。

 ロハス・ウォッシュを見分けるためには、どうしたらいいでしょうか。まず、自分の感性を養うこと。本物に触れてみることです。たとえば、野菜、服、家具、旅など。美しいものを見たり、触れたり、実際に食してみる。すべてのものを試す必要はありません。ワインが好きな人だったら、添加剤の入っていない有機栽培のワインを飲んでみる。ひとつでもふたつでも、どんなものでもいいのです。その原価値に触れることで、偽物がわかるようになるでしょう。


ロハス以前、ロハス以後

ロハス以前の発想は、遠くにある環境問題を、望遠鏡で眺めるようなイメージ。自分の現実とはかけ離れた場所で起きている出来事としてしか、環境を意識していない(Smallself(小さな自分))がそこにいる。ロハスは、まず環境の中に自分が身を置いている(Bigself(大きな自分))を自ら発見することから始まる。同じ望遠鏡をひっくりかえして眺めるだけで、世界はこんなにも親密に自分自身とつながっていることがわかる。ロハスとは、そんな「発想転換」への誘いだ。

こだわりから、つながりへ

Peter D.Pedersen
ピーター・D・ピーダーセン 1967年デンマーク生まれ。コペンハーゲン大学文化人類学部卒業。1992年には文化人類学の研究もかねて、五大陸22カ国を廻る。その後、東京コンサルタント会社、MXテレビニュースキャスター等を経て、2000年に環境コンサルティングを手がける「イースクエア」を設立。今春、アメリカでロハス消費者調査を行うNMI(The Natural Marketing Institute)と共同で、日米合同の調査を実施。
 さて、あなたがもしロハスについて興味を持ったならば、ここで質問です。「スモール・セルフで生きていきますか? それともビッグ・セルフで生きていきますか?」。スモール・セルフとは、今いるこの場所だけの自分でいいという人たち。ビッグ・セルフとは、未来や世界につながっていくライフスタイルをおくる人たち。どちらが格好いい生き方かということですね。

 コンビニエンスストアなどに募金箱が置いてありますよね。わたしはマイ・ルールとして、その箱を見たら財布に入っている10円玉以下のお金を入れるようにしているんです。たいした金額ではありませんが、平均すると1日に3回寄付をしています。つまり、世界とつながる瞬間が1日に3度あるのです。

 生活のすべてをロハスにする必要ありません。無理をしないで、生活の中で「ひとこだわり」を持つ。何か自分にできること、小さなことから始めようという意識を持つことが大事なことです。そして、「最高のエゴイストは最高のエコイストだ」と、わたしは思っています。自分にとって、一番愛おしいものから考えることが大切だということです。愛おしいものが自分だとすると、どういうものを食べるのか、どういうものを肌につけるのかなどと考えてみる。子どもが自分にとってもっとも愛おしい存在であれば、その子の将来を考えて、何を食べさせたらいいか、どういう家に住むのがいいのかということなどを考えてみる。

 利己主義的な視点で愛おしいものを考えていけば、それが地球や環境、そして未来につながっていくのです。わたしはロハスという考え方が、今後も長く続いていくと思っています。ロハスには、今、生きているわれわれのニーズを満たしながらも、未来の世代の可能性を壊さないサステナブルな考えがあるのです。



ロハスを超える日本の文化価値の創造へ

- ソトコト2005年7月号別冊付録チビコトより -

people

ロハスを超える日本文化の創造へ

文化、科学、医療。暮らしの基盤を支える分野でロハスな研究、活動を続けている専門家が、それぞれの立場から見える、考える、感じるロハスを語る。

当たり前こそ「有り難い」

竹村真一
たけむらしんいち●文化人類学者。1959年大阪生まれ。東京大学大学院文化人類学博士課程終了。京都造形芸術大学教授。ウェブサイト「センソリウム」や「100万人のキャンドルナイト」などをプロデュース。「宇宙樹」(慶応大学出版会)、「呼吸するネットワーク」(岩波書店)など著書多数。
 「枯木に花咲くより、生木に花咲くに驚け」──江戸時代の哲学者、三浦梅園の言葉です。僕にとっての“ロハス”の核心は、この言葉に表現されています。 誰でも枯木に花が咲いたら驚くけど、実はそれ以上に驚くべき奇跡が、日々身のまわりで起こっているじゃないか。春になって花が咲くのも、また私たちのからだの細胞や分子が毎日すごいスピードで入れ替わりながら、一見なにも変わらないように昨日と同じ私でいられるのも、考えてみれば驚くべきことですよね。

 たとえば自分の持っているクルマや家具が、知らない間に日々パーツが入れ替わって、つねに新しくなっていたとしたら驚くでしょ? あるいはその一部が突然「花」となって咲いたりしたら……。でも生命というのは、それを当たり前のように毎日やってのけているわけです。当たり前すぎて、そのすごさに気づかないだけ。だがら、ありふれたことが実は文字どおり「有り難い」、奇跡のようなことなんです。
 本当に大切なのは、ただ単に健康や環境に気を使うというだけでなく、こういうありふれた風景や出来事のなかに驚くべき知性が働いているという感覚を、一人ひとりが研ぎ澄ませていくことじゃないでしょうか。世界を見る「解像度」を上げるというか……。

 もちろん地球環境が大変なのは確かだけど、ただそのために無駄をなくそう、温暖化を防止しようというだけで終わらない、もっと高い文明の価値を見出していく「途上」に私たちはいるのだと思っています。
 咲くはずのない花が咲いたというニュースに異変を感じる感性も大切だけど、では当たり前に咲くはずの花が咲くだけでは何の驚きもないのか? というと、ある意味ではそういう感性の欠如が、咲くはずのない花を咲かせているとも言えるわけですよね。

 だから「ロハス」や「エコ」という言葉も、まだ本当に我々が目指すべき新しいライフスタイルの核心を表現しえていない、途上の言語だと思っています。


日本文化のなかにロハスの種子を見る

 とはいえ、こういう感覚は何も特別なものではなく、実は身近な営みのなかに隠れてもいます。たとえば「花見」。

 サクラの「サ」は山の神、山の生命エネルギーですね。それが春になるとひたひたと里に降りてきて、田の神になって稲を実らせる。それが降り来るプロセスが“サオリ”、その季節が“サツキ”、そしてその途中で山と里の中間地点でトランジットする場所、サの神が宿るくら座のことを“サクラ”という。つまり、サクラという小さな花のなかに、大きな宇宙の循環を見ていたわけです。

 このように日本の文化遺伝子、ライフスタイルのなかには、未来のロハス文化の種子として、もっと地球全体に贈与すべき貴重なソフトウェアがたくさんあるようにも思います。

本当の価値を見つける時代

たとえば「多様性を担保する」「多元的なものを共存させる」という日本特有の文化スタイルも、エコロジカルでサスティナブルな発想として今後とても重要な意味を持ってくるでしょう。

 実際、漢字・ひらがな・カタカナ・アルファベットという、起源もその背景にある言語体系もまったく異なる4つの文字を見事に併存させて使いこなす言語なんて、世界中見てもどこにもありません。まさに“やおよろず八百万”の文化ですね。

 生命科学や複雑系の研究からも、「多様性の共生」ということがサスティナブルなシステムの条件だということがわかってきました。たとえば病原性大腸菌O157が不潔な場所でなく、むしろ清潔な所で蔓延したという事実。

 普通、自然環境や人の腸内にはつねに多様な菌がゆるやかに共生していて、O157のような新参者が突然繁殖しようとしても不可能です。しかし抗生物質や抗菌グッズで無菌状態にされた環境では、特定の病原菌の暴走に歯止めをかけるものが何もないので死者を出すに至る。

 ここでのポイントは、「多様性」、あるいは「多元の共生」こそが真の健康のバロメーターであり、安全・安心の担保だということです。

 人間の浅知恵は、つい善玉と悪玉を二元論で区別し、「悪」を退治すればよいと考える。けれども自然界には本来、善玉も悪玉もないんです。むしろ善悪を単純に区別せず、清濁あわせ呑んでバランスをとる──いわば誤りを許容し、多様性を保持するやり方こそが「自然の叡智」なんですね。

 Health(健康)あるいはHeal(癒し)という言葉も、もともと「全体」を意味するWholeからきている。つまり病気や悪を排除した状態が健康なのでなく、むしろバランスがとれていること、少々のゆらぎや誤りも許容しうる全体性を持っていることが、本当の「健康」なわけです。

 となると、LOHASでいうHealthやSustainabilityというのも、少し気をつけなくてはいけない。ITとマネーとファーストフードで画一化された世界がとても脆弱で無味乾燥なのと同様、硬直化したエコ・ファシズムや健康強迫もとても貧しく危うい、非サスティナブルな世界です。
 その意味で“やおよろず文化”の日本から、「寛容」とやわらかい「強さ」を備えた未来の地球文化のOSを提案していきたいものです。



ロハス対談 小黒一三×坂本龍一

- ソトコト2005年7月号別冊付録チビコトより -

conversation

坂本龍一X小黒一三対談

2005年某月、東京六本木にあるJ-WAVEのラジオ番組で行われたロハス対談。 かねてから環境に関心を寄せてきたロハスを考えるアーティスト、 坂本龍一氏に、本誌編集長の小黒一三が迫る。 番組の中から、ふたりの「懐かしい未来派」の話を聞いてみよう。

小黒 坂本さんはいつ頃から環境に関心を持つようになったの?

坂本 自分自身の価値観が大きく変わったのは、実はアフリカなんですよ。アフリカでは長年、内戦が繰り返されていたけれど、1997年にも大きな内戦が起きて、20万人もの大量虐殺(※1)があった。物資も届けられない状態だから、飢餓が起こってね。

 ショックだったね。戦争って、環境や経済、すべてが結びついて起こるんだということを目の当たりにした。震災害も飢餓も自然に起こるものじゃない。どこかで誰かがやっていることが、地球の反対側にまで影響するということに気がついたんだ。いや、気がついていたんだけど、気がつかないふりをしていたのかな。
 ところで、この「I LOVE TSUKIJI(※2)」のバッジ。これ、いいね!

小黒 なんで持ってるの!? これはひと月前にイタリアのスローフード協会の会長が日本に来たときに、彼の提案で作ったものなんですよ。

 会長は空港に着くなり、「明朝、築地市場に行きたい!」って電話してきてね。でも、ぼくらも朝早いのはいやだなと思って「じゃあ10時くらいに」と言ったら、「10時じゃ、せりが見れないだろう!」って(笑)。そこまで知っている。

 でも、築地市場の移転を聞いて驚いていたね。彼らにとっては日本的なイメージが満たされている、アジア的なカオスがある魅力的な場所なんだよね。われわれ日本人にとっても、築地市場は文化遺産だと思うよ。

坂本 あんな素晴らしい場所を壊しちゃうなんて理解できないね。築地市場を世界遺産にしてもいいと思う。東京の街には、下町とかほかにもいいところがたくさんある。それを人為的に無作為に壊していくのは、ロハス的とはいえないね。小黒氏が『ソトコト』でロハスって言い出したのは、自然にその言葉か耳に入ってきたの?

小黒 直感的に、新しい消費者層が出てきたなと感じていたんですよ。それをスローフード、スローライフっていう言葉で括ろうとしていたんだけれど、できない。

 僕が考えていたのは、都市生活者のライフスタイルの新しい呼称だったんだけれど、なかなかいい言葉が見つからなかった。そこでロハスっていう言葉を聞いたときに、ぴったりな響きだと思ったね。

坂本 直感ではまったんだね。ぼくはロハスで大事だと思うのは、「エゴ」なんです。おれはおいしいものを食いたい、おれはおいしい空気を吸いたい、おれは安全な水を飲みたいというね。まず、「おれ」がどうしたいか。そして、そのためにはどうしたらいいかを考えること。

小黒 「エゴから始まるエコ」。それがロハスなんですよね。だから、『ソトコト』ではこれまで表紙に「地球(※3)」ってかいていたんだけれど、この創刊6周年記念号から、地球という文字を外すことにしたんですよ。環境と人間はつながっている。地球はもう自分自身なんだということでね。

坂本 自分でしょう、やっぱり!20世紀の大量生産・大量消費の考え方は、もう美しくないと思いますね。地球が汚れて、それが全部、自分たちに戻ってきちゃうんだから。

 みんながエゴイストにならないと地球も社会もよくならないと思う。おいしいものだって作られないし、食べられない。美しいものだって生まれない。つまり、そのおいしいものを食べたいから、地球を汚さないようにしようと思う。この関連が見える人が未来人だと思うな。

小黒 本を読んでいて、ある言葉を発見したときに自分の中にストーンとはまったんですよ。あ、ロハスって懐かしい未来なんだ、とね。きたるべき未来は、この六本木のビルから見える風景ではなくて、懐かしい未来なんだよ。『ソトコト』では、来年、「ロハスの未来派」展を開催する予定なんです。

坂本龍一

坂本 未来派展か、面白そうだね。未来派は1907年にミラノから始まった20世紀最初の芸術運動だったけれど、それは力と速度の20世紀を予言した運動だった。ちょうど未来派から100年経った今、21世紀の未来派のビジョンを指し示す時期にきているのかもしれないね。

 ぼくたちが子どものころ読んでいた雑誌やマンガで見た未来は、もうすでにある。これから先どこへ行くのかを考えなければいけないと思う。六本木ヒルズの周辺に小川が流れていて、めだかが泳いでいる。そういった風景が、21世紀の懐かしい未来の姿なんじゃないかな。

小黒 ぼくは犬とか猫を飼うんだったら、牛とか馬を飼ってほしいと思うね。プリウスに乗っている人は、その先には馬で闊歩したいっていう気持ちがあるとおもうんですよ。これからだんだん懐かしい未来に近づいていくんじゃないかな。ところで、東京にはロハスな人はどのくらいいるかな。
坂本 ロハスはもともとライフスタイルズっていう複数形だから、ひとつの定義じゃないよね。東京的なロハスは、ニューヨークやアフリカとも違うし、それだけ多様性がある。

 そういう意味では、東京的なロハスな人は出てきているんじゃないかな。そんなに環境問題に関心がなかった若い女性でもヨガを始めて、それで身体にいい水を飲んだりする人も増えている。
何となく最初に身体が気づく。そのきっかけを探している予備軍は、たくさんいるだろうね。

小黒 予備軍まで含めたら、東京にはものすごい数のロハスな人たちがいるかもしれないね。ロハスはひとつの政党になる可能性もあるんじゃないの?
坂本 どうかなあ……。みんなが思っているマジョリティがロハス的とは限らないし、たったひとりのロハス的というのもあると思う。

 一番大事なのは、すでにもう何千万いるかもしれないロハス層は、こういうものをかいたくないよねって誰かが呼びかけるレベルのものではなくて、みんなが内に思うことでものすごい大きな力になると思うんだ。

 たとえば、スーパーで生産者の情報を携帯なんかで見ることができるトレーサビリティ・システムだって、消費者からの圧力がなければわざわざ企業がそんな面倒くさいことをしないと思う。
だから、ロハスはひとつの組織に縛らなくても、政治的な力、あるいは経済的な力よりも、はるかに大きな力を持っていると思う。

小黒一三

小黒 なるほど。ロハスは政党という形をとらなくても、新しい力を生み出す可能性のあるものなのかもしれないね。それはすごいことだね。

坂本 ぼくはエロいエコがあってもいい、と思っているんだ。今はまだ世界中探してもどこにもないし、『ソトコト』もエロくないよね(笑)。でも、“食って、SEXして、寝る”というのが生命の基本じゃない。それがなかったら、この地球という星で35億年の生命は続いてこなかったんだから。一番、生命の根幹にある、肝心なところだよね。それが優等生的にきれいに排除されていることが、まだやっぱり本物じゃない気がする。

 あともうひとつ、ぼくがロハスで大事だと思うのは身土不二(※4)。もう15年ニューヨークに住んでいるけれど、やっぱり死ぬ前には日本列島に帰ってきたいと思っているんです。食事は日本のほうが圧倒的においしいし(笑)。でも、それって大きい。身土不二に帰ったら、食べるものがすべてですからね。食べ物が身体を作っているわけですから。

小黒 いいねえ、身土不二。この言葉をぜひ広めたいよね。ぼくも食べることって大事なことだと思いますね。「なぜアフリカにホテルを造ったんですか」ってよく聞かれるんだけれど、ただアフリカで彼らと食事することが楽しかったんですよ。なんだか知らないけれど、いつもゲラゲラ笑っている。彼らの生命力の強さって、やっぱり食べることからきているんだなって思った。エゴイズムの身土不二。みんながその精神をもてば、懐かしい未来への道が開かれるかもね。


※1 1997年、アフリカのシエラレオネの軍事クーデターをきっかけに、虐殺や手足切断が続発。40万人以上が避難した。
※2 今春、来日したイタリアのスローフード協会会長カルロ・ペトリーニ氏の提案により、スローフード協会と『ソトコト』の連名で築地市場移転反対キャンペーンを展開したときに製作したもの。
※3 『ソトコト』の表紙の上部には、これまで「地球と人をながもちさせるエコ・マガジン」と記載していたが、この創刊6周年記念号から「ロハスピープルのための快適生活マガジン」に変更。
※4 「身体(身)と環境(土)とは不可分(不二)である」という意味。人間も環境の産物で、暮らす土地において季節の物(旬の物)を常食することで身体は環境に調和する。人間の身体は、その人が住んでいる風土と切り離せないということ。




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