2010年は国連が定める「国際生物多様性年」で、10月には愛知県名古屋市で生物多様性条約第10回締約国会議も開催される。企業やNGOで生物多様性に関する活動が盛んになってきているが、積水ハウスでは2001年から、住まいの庭という暮らしに身近なところから自然生態系を考え、保全するための取り組みを行っている。日本人固有の里山という自然観を手本にしながら、鳥や蝶のために日本の在来樹種を植える庭づくりの提案、それが「5本の樹」計画だ。
「クヌギやコナラ、ヤマザクラなど、家を建てる地域の気候や植物の適応性に合わせた日本の原種や在来樹種のなかから、とくに鳥や蝶が喜ぶ木をセレクトして提案しています」と説明するのは、積水ハウス環境推進部の木戸一成さん。
「常緑の高木は鳥の隠れ家に、下草の陰は虫たちの棲みかに、木の実は鳥のエサにもなります」
緑あふれる庭づくりによって、四季の移ろいを感じ、家族のコミュニケーションが生まれ、子どもと一緒に自然観察会を行って生態系を学ぶなど、人と生き物が共生することで、住まう家族の暮らしも豊かになるのだ。
「5本の樹」計画は庭づくり提案にとどまらず、「Dr.フォレストからの手紙」という、小・中学生向けの環境教育プログラムとしても展開。住まう家族だけでなく、地域の子どもたちの生物多様性に対する意識も高めているのだ。
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上右/積水ハウスの木戸さんが「5本の樹」計画を説明した。上左/農業と生物多様性について語る、農林水産省の末松さん。下右/捕えた虫は名前や特徴を教えてもらった後に放す。下左/東京ミッドタウン内の「d-labo」で開催。
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さらに、2008年からは「生き物調査」も始めている。専門家と一緒に団地周辺と団地内の生き物を調べ、「5本の樹」計画の生態系保全効果を検証するものだ。周辺住民の方々が参加することもあり、調査だけでなく家族で身近な生態系を体感できるイベントにもなっている。
次に、講師としてレクチャーを行ったのは、農林水産省政策課長で東京農業大学客員教授でもある末松広行さん。先進国で最低水準の日本の食料自給率やその向上に向けた取り組み、フードマイレージ、バ
イオマス燃料、耕作放棄地面積の推移など、食料需給に関する課題を示しながら、田んぼが持つ多面的機能にもふれた。
「田んぼは生物多様性に富んだ空間です。人間がつくったもので純粋な自然とは呼べないかもしれませんが、里山と同様、手を入れつつ保全する環境として維持していく必要があると思います」
現代の暮らしのなかで、自然と折り合いをつけながら生物多様性を守っていく、そのバランス感覚が大切なのだ。
今月のDATA
「5本の樹」計画による年間の植栽本数
「5本の樹」計画による植栽本数は年々増加し、08年度は年間85万本にまで増えている。その植栽の結果、生態系にどんな効果をもたらしているかを、専門家とともに全国5か所6団地で調査したところ、例えば、コモンシティ青葉のまち(宮城県仙台市)では団地内の公園を含めて昆虫が20種も確認できたのに対し、
温暖化進行の指標にもなるナガサキアゲハ(左)やツマグロヒョウモン(右)。 その周辺地域では2種のみと、周辺と比べ、団地内の生物相の豊かさが確認できている。また、コモンステージ松山(愛媛県松山市)では経年変化を調査し、1年間で鳥・蝶・セミ類の種類が増えていることもわかっている。