

前述した環境経営基本政策にのっとり、約10年前から、工場から出る廃材を利用したリサイクルファスナーを開発しています。廃材だけでは需要に対応することができず、現在では帝人さんと協力してペットボトルなどを再利用した循環型の、まるごとリサイクル(オールPETリサイクルファスナー)を製造しています。
また、生分解性樹脂を使用したファスナーも開発しています。使用後に土に埋めると地中の微生物がファスナーを分解し、水とCO2になり、CO2は植物が光合成をする際に吸収されるという循環を作っています。生分解性樹脂に関しては、苗木などに使用するビニールひもを、生分解性樹脂に変えることで、成長後に土に残しても分解されるという商品を開発しました。
2005年に開催された「愛・地球博」でも使用され、回収が不要で、そのまま土に還るということで、大変重宝されたようです。
使用段階での環境貢献として、トラックの輸送効率を高める樹脂製のタンクも開発しました。これは、液体を運ぶタンクローリーが、荷物を下ろしたあとはタンクを空にして帰らなければならない点に着目し、樹脂製のタンクに水密機構のファスナーを取り付けることで小さく折りたたむことができるソフトタンクです。行きはソフトタンクに液体を入れ、帰りはタンクを折りたたんで空になった荷台に荷物を積むことができます。ファスナーが付いているので、フルオープンすれば洗浄しやすいという利点もあります。
明石海峡大橋にもファスナーが利用されています。道路に落ちるゴミや油分が排水溝を通して海に落ち、海洋汚染することがないように排水溝を清掃する必要があるのですが、排水溝の下にある「受け」の部分に水密気密ファスナーを取り付けることで、定期的な清掃作業の効率を高めています。

ファスナーの需要のうち、3/4は衣類ですが、鞄や産業資材にも使用されています。意外な用途として、まず、NASAの宇宙服が挙げられます。これは、水密気密ファスナーを使用しており、1960年代のアポロ計画から40年以上を経た現在でもほとんど同じ構造のファスナーが使用されています。
気密機能を持つファスナーは、展示会やイベントで使用されるバルーンに使われています。ファスナーを開けると、一気に空気が抜けるので作業時間を短縮できるというメリットがあります。
先ほど説明させていただいた、液体を運ぶ際に使われるソフトタンクについている水密ファスナーについては、青函トンネルで異なる種類の防水ファスナーが7000本ほど使用されています。全長約54kmの海底トンネル内には、どうしても水が浸み出してしまいます。50メートルおきに排水溝が設置されていますが、そこにバクテリアやカビの一種が発生してしまうので清掃するしなければなりません。これまでは、ねじ止め式窓が使用され、防水性を保つために開閉に大変手間がかかりましたが、防水ファスナーを使うことで、作業効率が大幅にアップしました。また、一度取り付けると数年間はメンテナンスフリーで使用することができるのも大きなメリットとなっています。

また、漁業で使用する曳き網にもファスナーが使用されています。かつて、魚網の先端部は「ちょんまげ」と呼ばれ、ひもで結びつけられていたので、ゴミがたまりやすい、漁獲物を取りだしにくいなどの問題がありました。魚網の先端部にファスナーを取り付けることで、ゴミを取り除く作業や水揚げ作業の作業性が大幅に向上しました。魚網は非常に大きいサイズなので、藻などのゴミが入ると漁船の燃費を低減させますが、ファスナーの利用により操船時の燃費がよくなるという効果ももたらしました。
定置網にもファスナーは利用されています。サケ・マス漁に使用される定置網は、川の河口から4~5kmくらいの地点に、長さ1km、幅20~50mにわたり設置されますが、ここでも、漁網の末端にファスナーが取り付けられています。漁網の末端は、かつて全部ひもで結えてあり、水揚げ時にはひもを外し、再び結ぶという作業をしていました。ここに、長さ30mくらいのファスナーを取り付けることで、作業の効率化と作業員の安全性を向上させることができました。網は、1年に1回陸地にあげて痛みなどをチェックするが、ファスナーの部分は7、8年使用しても交換の必要がないくらい、耐久性に優れています。
その他、曳き網や定置網のスタンダードとしても、ファスナーが使用されています。
養殖用の魚網にもファスナーが利用されています。アワビなどの養殖では、稚魚とエサをかごに入れて海に沈め、エサをやるためにかごを引き上げるという作業が行われます。数百個のかごを引き上げて、エサをやるというのは大変な作業ですが、かごにファスナーを取り付けることで、大きく省力化が進むことになりました。このファスナーには、錆などが発生しないように特別なステンレスが使われており、10年使用しても壊れないと高い評価をいただいています。

油などの流出事故に使用されるオイルフェンスにも、ファスナーが使用されています。同じ規格のファスナーを使用することで、オイルフェンス同士を簡単に素早く接続することができます。このオイルフェンスは、日本の大型船舶すべてに装備することが義務付けられています。
下水工事などで、作業員の方に必要な酸素などを供給する風菅が使用されるが、風菅の接続部分にもファスナーが利用されています。
2007年のロハスデザイン大賞・新宿御苑展にも出展した、エマージェンシーユニットは、空気のテントで、わずか10分足らずでテントを立ち上げることができる上に、非常に機密性が高くなっています。また、ファスナーで接続することで、さまざまな形状に組み立てることができるという特徴があり、自衛隊やJICAを通じて、イラクでのPKO活動や、スマトラ沖地震での救難活動に用いられています。
その他、着せ替え人形のブーツに着脱用のファスナーが使用されていますが、これは恐らく世界で一番軽く、細く、薄いファスナーだと考えられます。
また、クレーンの転落防止ネットの開口部には、漁網用のファスナーを活用し、クレーンによる移動によってネットの開口部がスライドする仕組みになっています。
水中で使用するカメラケースの開閉部にも水密気密ファスナーが使用されており、防水性を確保しながら、カメラを出し入れする際の操作性を高めています。
札幌ドームでは、遮光用スクリーンの両サイドにあるレール部分にファスナーを使用しています。ファスナーの、スムーズに開閉できる利点を活かし、レールとして使われている例となります。
その他にも、足にピッタリとフィットする健康ストッキングにファスナーが取り付けられているほか、いわゆる面ファスナー を使って取り付けることで、カーテンの着脱を容易にする、電動研磨機のやすり交換を簡易にするなどの用途にもYKKの製品が使用されています。