

近年、自然生態系の重要性とその脆弱性が認識され、様々なレベルで日本の生態系に対する保全活動が進められています。一方、日本では里山という、町と山の中間にある雑木林や鎮守の森など、人と自然が折り合いを付けながら共に暮らす場所がありました。ライフスタイルの変化や大規模開発などにより、急速に失われていましたが、最近、その価値が見直され、全国各地で保全活動が進められています。
5本の樹計画とは、里山の考え方を庭づくりに取り入れ、「3本は鳥のために、2本は蝶のために、日本の在来種を」植えましょうという庭づくりの提案です。
5本の樹計画を進めることは、日本各地の自然環境や生態系保全に貢献し、次世代に緑豊かな自然を伝えることになります。また、住宅の庭に日本在来の樹木を植えることで、鳥や蝶などの生き物たちを庭に呼び寄せることができ、自然と共生できる暮らしが実現できるのではないかと考えています。

5本の樹のポイントは、2つあります。一つは、こだわりの樹木を選んでいるという点です。日本の原種、在来種を選択していますが、その結果、比較的手入れが容易で、病気が発生しにくいというメリットがあります。さらに、生き物が好む樹木を選んでいます。例えば、公園でよく見るヒマラヤシーダーは明治時代に日本に導入された外来種で、20種類くらいの生き物が利用するといわれていますが、日本の在来種であるクヌギは300~600種類くらいの生き物が利用しているといわれています。日本に昔からあって、たくさんの生き物たちが利用する植物という視点から、品種を選んでいます。
もう一つのポイントが、気候風土との調和です。日本全国をおおよそ5つの地域に分け、その地域で生育できる品種を選んでいます。気候風土と調和した植物を中心に蝶や鳥を呼べるような植物をモデル的に組み合わせ、地域生態系への寄与を目指しています。取組みは2001年より、展示場などの積水ハウス所有地から開始し、現在では団地や分譲地など街づくりにも5本の樹計画を導入しています。

自然生態系をはぐくむという視点から、「サステナブル宣言」の中にある4つの価値に5本の樹計画を位置づけて、サステナブル社会の実現を図っていきたいと考えています。
実際に、「5本の樹計画」を導入したある団地では、時間がたっても周囲の団地よりも資産価値が下がっていないという結果も出ています。
今後の課題は、管理面となります。日本の在来種は、日本の気候に合っているため、外来種や園芸品種に比べ、病気になりにくく、育てやすいというメリットがありますが、落ち葉や害虫などにどう対処していくか、実際に管理されているお客様や専門家からのアドバイスをもとに、様々な手法を検討中です。例えば、シジュウカラという小鳥がいますが、一羽あたり1年間で10万匹のシャクトリムシを捕食しているという計算があります。巣をつくると、もっと多くの虫を食べることになり、こういった鳥を庭に呼ぶことで、害虫対策になるのではないかと考えています。
2006年度にはグッドデザイン賞新領域創造部門を受賞することができ、また、小学校の環境教育プログラムとして、5本の樹の話をするカリキュラムを作るなど、対外的な活動も進めているところです。