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ロハス対談 小黒一三×坂本龍一

- ソトコト2005年7月号別冊付録チビコトより -

conversation

坂本龍一X小黒一三対談

2005年某月、東京六本木にあるJ-WAVEのラジオ番組で行われたロハス対談。 かねてから環境に関心を寄せてきたロハスを考えるアーティスト、 坂本龍一氏に、本誌編集長の小黒一三が迫る。 番組の中から、ふたりの「懐かしい未来派」の話を聞いてみよう。

小黒 坂本さんはいつ頃から環境に関心を持つようになったの?

坂本 自分自身の価値観が大きく変わったのは、実はアフリカなんですよ。アフリカでは長年、内戦が繰り返されていたけれど、1997年にも大きな内戦が起きて、20万人もの大量虐殺(※1)があった。物資も届けられない状態だから、飢餓が起こってね。

 ショックだったね。戦争って、環境や経済、すべてが結びついて起こるんだということを目の当たりにした。震災害も飢餓も自然に起こるものじゃない。どこかで誰かがやっていることが、地球の反対側にまで影響するということに気がついたんだ。いや、気がついていたんだけど、気がつかないふりをしていたのかな。
 ところで、この「I LOVE TSUKIJI(※2)」のバッジ。これ、いいね!

小黒 なんで持ってるの!? これはひと月前にイタリアのスローフード協会の会長が日本に来たときに、彼の提案で作ったものなんですよ。

 会長は空港に着くなり、「明朝、築地市場に行きたい!」って電話してきてね。でも、ぼくらも朝早いのはいやだなと思って「じゃあ10時くらいに」と言ったら、「10時じゃ、せりが見れないだろう!」って(笑)。そこまで知っている。

 でも、築地市場の移転を聞いて驚いていたね。彼らにとっては日本的なイメージが満たされている、アジア的なカオスがある魅力的な場所なんだよね。われわれ日本人にとっても、築地市場は文化遺産だと思うよ。

坂本 あんな素晴らしい場所を壊しちゃうなんて理解できないね。築地市場を世界遺産にしてもいいと思う。東京の街には、下町とかほかにもいいところがたくさんある。それを人為的に無作為に壊していくのは、ロハス的とはいえないね。小黒氏が『ソトコト』でロハスって言い出したのは、自然にその言葉か耳に入ってきたの?

小黒 直感的に、新しい消費者層が出てきたなと感じていたんですよ。それをスローフード、スローライフっていう言葉で括ろうとしていたんだけれど、できない。

 僕が考えていたのは、都市生活者のライフスタイルの新しい呼称だったんだけれど、なかなかいい言葉が見つからなかった。そこでロハスっていう言葉を聞いたときに、ぴったりな響きだと思ったね。

坂本 直感ではまったんだね。ぼくはロハスで大事だと思うのは、「エゴ」なんです。おれはおいしいものを食いたい、おれはおいしい空気を吸いたい、おれは安全な水を飲みたいというね。まず、「おれ」がどうしたいか。そして、そのためにはどうしたらいいかを考えること。

小黒 「エゴから始まるエコ」。それがロハスなんですよね。だから、『ソトコト』ではこれまで表紙に「地球(※3)」ってかいていたんだけれど、この創刊6周年記念号から、地球という文字を外すことにしたんですよ。環境と人間はつながっている。地球はもう自分自身なんだということでね。

坂本 自分でしょう、やっぱり!20世紀の大量生産・大量消費の考え方は、もう美しくないと思いますね。地球が汚れて、それが全部、自分たちに戻ってきちゃうんだから。

 みんながエゴイストにならないと地球も社会もよくならないと思う。おいしいものだって作られないし、食べられない。美しいものだって生まれない。つまり、そのおいしいものを食べたいから、地球を汚さないようにしようと思う。この関連が見える人が未来人だと思うな。

小黒 本を読んでいて、ある言葉を発見したときに自分の中にストーンとはまったんですよ。あ、ロハスって懐かしい未来なんだ、とね。きたるべき未来は、この六本木のビルから見える風景ではなくて、懐かしい未来なんだよ。『ソトコト』では、来年、「ロハスの未来派」展を開催する予定なんです。

坂本龍一

坂本 未来派展か、面白そうだね。未来派は1907年にミラノから始まった20世紀最初の芸術運動だったけれど、それは力と速度の20世紀を予言した運動だった。ちょうど未来派から100年経った今、21世紀の未来派のビジョンを指し示す時期にきているのかもしれないね。

 ぼくたちが子どものころ読んでいた雑誌やマンガで見た未来は、もうすでにある。これから先どこへ行くのかを考えなければいけないと思う。六本木ヒルズの周辺に小川が流れていて、めだかが泳いでいる。そういった風景が、21世紀の懐かしい未来の姿なんじゃないかな。

小黒 ぼくは犬とか猫を飼うんだったら、牛とか馬を飼ってほしいと思うね。プリウスに乗っている人は、その先には馬で闊歩したいっていう気持ちがあるとおもうんですよ。これからだんだん懐かしい未来に近づいていくんじゃないかな。ところで、東京にはロハスな人はどのくらいいるかな。
坂本 ロハスはもともとライフスタイルズっていう複数形だから、ひとつの定義じゃないよね。東京的なロハスは、ニューヨークやアフリカとも違うし、それだけ多様性がある。

 そういう意味では、東京的なロハスな人は出てきているんじゃないかな。そんなに環境問題に関心がなかった若い女性でもヨガを始めて、それで身体にいい水を飲んだりする人も増えている。
何となく最初に身体が気づく。そのきっかけを探している予備軍は、たくさんいるだろうね。

小黒 予備軍まで含めたら、東京にはものすごい数のロハスな人たちがいるかもしれないね。ロハスはひとつの政党になる可能性もあるんじゃないの?
坂本 どうかなあ……。みんなが思っているマジョリティがロハス的とは限らないし、たったひとりのロハス的というのもあると思う。

 一番大事なのは、すでにもう何千万いるかもしれないロハス層は、こういうものをかいたくないよねって誰かが呼びかけるレベルのものではなくて、みんなが内に思うことでものすごい大きな力になると思うんだ。

 たとえば、スーパーで生産者の情報を携帯なんかで見ることができるトレーサビリティ・システムだって、消費者からの圧力がなければわざわざ企業がそんな面倒くさいことをしないと思う。
だから、ロハスはひとつの組織に縛らなくても、政治的な力、あるいは経済的な力よりも、はるかに大きな力を持っていると思う。

小黒一三

小黒 なるほど。ロハスは政党という形をとらなくても、新しい力を生み出す可能性のあるものなのかもしれないね。それはすごいことだね。

坂本 ぼくはエロいエコがあってもいい、と思っているんだ。今はまだ世界中探してもどこにもないし、『ソトコト』もエロくないよね(笑)。でも、“食って、SEXして、寝る”というのが生命の基本じゃない。それがなかったら、この地球という星で35億年の生命は続いてこなかったんだから。一番、生命の根幹にある、肝心なところだよね。それが優等生的にきれいに排除されていることが、まだやっぱり本物じゃない気がする。

 あともうひとつ、ぼくがロハスで大事だと思うのは身土不二(※4)。もう15年ニューヨークに住んでいるけれど、やっぱり死ぬ前には日本列島に帰ってきたいと思っているんです。食事は日本のほうが圧倒的においしいし(笑)。でも、それって大きい。身土不二に帰ったら、食べるものがすべてですからね。食べ物が身体を作っているわけですから。

小黒 いいねえ、身土不二。この言葉をぜひ広めたいよね。ぼくも食べることって大事なことだと思いますね。「なぜアフリカにホテルを造ったんですか」ってよく聞かれるんだけれど、ただアフリカで彼らと食事することが楽しかったんですよ。なんだか知らないけれど、いつもゲラゲラ笑っている。彼らの生命力の強さって、やっぱり食べることからきているんだなって思った。エゴイズムの身土不二。みんながその精神をもてば、懐かしい未来への道が開かれるかもね。


※1 1997年、アフリカのシエラレオネの軍事クーデターをきっかけに、虐殺や手足切断が続発。40万人以上が避難した。
※2 今春、来日したイタリアのスローフード協会会長カルロ・ペトリーニ氏の提案により、スローフード協会と『ソトコト』の連名で築地市場移転反対キャンペーンを展開したときに製作したもの。
※3 『ソトコト』の表紙の上部には、これまで「地球と人をながもちさせるエコ・マガジン」と記載していたが、この創刊6周年記念号から「ロハスピープルのための快適生活マガジン」に変更。
※4 「身体(身)と環境(土)とは不可分(不二)である」という意味。人間も環境の産物で、暮らす土地において季節の物(旬の物)を常食することで身体は環境に調和する。人間の身体は、その人が住んでいる風土と切り離せないということ。



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